DAKS LOVER TALKS

DAKSの創業125周年を迎えるにあたり、ファッションディレクター、森岡 弘さんが、DAKSにまつわる素敵な方々と対談。それぞれの視点から、125年に亘るブランドの知られざる魅力に迫ります。

INTERVIEW MOVIE
PROFILE
にしぐち 瑞穂
英国王室研究家、コラムニスト、スタイリスト。スタイリストとして20年以上のキャリアを持ち、初渡英でそのまま移住。特にキャサリン妃の研究において知られ、帰国後はスタイリスト業の傍ら、キャサリン妃のリサーチを続け、ファッション誌『25ans』でコラムを連載。『25ans』Webサイトにて記事を週4日更新している。TV出演、イベントでのトークショーや、英国関連ショップのディレクションなど、ファッション・英国・キャサリン妃関連で幅広く活躍中。

昼夜を問わず、英国王室についての情報を収集し、連日インターネットでニュースを発信しているのが、英国王室研究家のにしぐち瑞穂さんです。今回はダックスとの関わりの深い英国王室のお話を交えながら、ダックスの魅力や思い出について森岡 弘さんと対談をしていただきました。

実はオープンだった英国王室の情報発信

森岡
にしぐちさんは肩書をお聞きしましたら、英国王室研究家でいらっしゃる。
にしぐち
はい。
森岡
素晴らしいですね! 僕は今回、勉強させていただくつもりで参りました(笑)。
にしぐち
正直なところ、研究家というよりも、私自身は“英国王室勉強家“と自覚しています。毎日勉強ですね。
森岡
毎日勉強するほど、情報があるのですか。新聞などをこまめにチェックなさるのでしょうか?
にしぐち
いまはネット社会で、英国王室もSNSの公式アカウントを持っています。ネットにもメディアにも常にオープンに情報が出てくるので、毎日忙しいですね。このオープンな情報発信が、新しい英国を象徴しているように思います。
森岡
そうなのですか?!  王室は閉ざされたものとの印象を持っていましたので、オープンと聞いて驚きです。
にしぐち
おそらく世界一開かれている王室ではないでしょうか。そして、興味の対象としての注目度の高さも世界一。それを王室の方々も分かっているかのように、上手に情報を発信しています。
森岡
情報のハンドリングもお上手だと言えますか?
にしぐち
本当にお上手ですね。一時期、英国王室は世界一の優良企業と称されたこともあるほどで、仮に企業としてみても参考になるなと思います。
森岡
情報発信をディレクションしている方が、なかにいらっしゃるのですね。
にしぐち
はい。もちろん、女王の右腕としてシニアの方がいらっしゃる一方、特にウィリアム王子、キャサリン妃のスタッフにおいては、お若い。30歳代の方々が側近でついていらっしゃいます。
森岡
では、召し上がった食事や、お召しの洋服などまで、分かりますか?
にしぐち
それも分かりますね。王室が公開する場合もありますし、映像が出た瞬間に、世界中のファンが独自に調査をして、着用しているブランドの情報が出てくることもあります。

ダックスと英国王室の関係

森岡
ダックスは王室とすごく密接なブランドだと思います。その関係性も明らかになっているのでしょうか。
にしぐち
なんといっても、ダックスをエリザベス女王がお召しになっている。さらにロイヤル・ウォラントを保有しているブランドであることからも、間違いなく王室と密接なブランドであると言えます。
森岡
ロイヤル・ウォラントについてご説明いただけますか?
にしぐち
簡単に言いますと、エリザベス女王、その旦那様のエジンバラ公、チャールズ皇太子それぞれから、優良と認められた企業もしくは組織に与えられる、とても名誉あるウォラント(認証)です。毎年、保有者は入れ替わりますが、約800件、授与されていると聞きます。ただ、御三方のウォラントをすべて保有している企業はアパレル分野だと実は5社しかありません。ダックスは、その1社です。
森岡
たった5社ですか?! では3つのウォラントを保有しているって凄いことですね。
にしぐち
はい、凄いことです! ウォラントの審査は厳しくて、一般的には5年に一度の更新と言われているものの、2年、または3年で更新される場合もあるようですね。更新のたびに、絶対条件としてご愛用である、つまり購入の履歴があることが求められます。また、品質についての厳しい審査が設けられているのです。なかでもチャールズ皇太子は、環境保護に対して非常に熱心で、英国のウール協会(英国羊毛公社)の支援もなさっています。そんな方のウォラントを授与されているダックスは、凄いの一語に尽きます!
森岡
凄いブランドとは分かっていましたが、まだまだ勉強不足でした(笑)。
にしぐち
800件と聞けば、多いように感じますが、自動車メーカーなどのほか、タバスコやチョコレートなど身近な生活必需品にまで授与されています。それを考えると、私たちの生活の中にも800ブランドくらいのものはありそうですよね。
森岡
家の中をくまなく見ると、それくらいの企業やブランドの製品はあるでしょうね。
にしぐち
それを踏まえて800件と考えると、女王が授与なさる数は、決して多いとは言えない。ましてや御三方から授与されたのはアパレル分野だと5社のみ。さらに言えば、英国のみならず、日本にも授与されているものがあります。
森岡
そうなのですか。
にしぐち
つまり、ウォラントはインターナショナルでもあるので、ダックスがアパレル分野のわずか5社の1社に入っているのは素晴らしい。
森岡
なるほど、勉強になりました。

ウォラントを長きに亘り、維持する努力

森岡
ダックスが125年を迎えるにあたり、3つのウォラントを保有している事実はブランドに一層深みを与えますね。長い間、間違いがないブランドとのお墨付きを得ているわけですものね。
にしぐち
まさにその通りです。
森岡
品質に加えて、世の中への貢献なども審査したうえでの授与と考えてよいのでしょうか。
にしぐち
もちろんです。ダックスの理念と同じで、品質とサービスがとても重要な審査ポイントと考えられます。また、エリザベス女王のファッションのポイントとして聞こえてくるのが、シンプルである、心地よい、サポート(引き立てる・貢献できる)力がある、の3つ。ダックスはクオリティを大切にしていて、代々長く受け継ぐことができます。長く愛用できるのは確かな品質の証明ですから、ブランドの考え方と、女王のお選びになるポイントは結びつくのでしょう。
森岡
ウォラントはプライドを持っているブランドの証とも言えそうですね。常に完璧でなくてはいけないというのか。ウォラントを保有しているからといって、努力を怠ると取り消されることもあるのでしょうか。
にしぐち
もちろんです。先ほど申しましたように、通常5年、ときには2年、3年で更新が行われます。いまや社会貢献も審査の対象のようなので、品質の維持向上以外のこともすべて認められて、ようやくウォラントが授与される。たとえばチャールズ皇太子が高い関心を寄せる環境保護の理念に合致しないと判断されると皇太子のウォラントは更新できなくなるわけです。それだけでも大変なのにダックスが、ずっと授与され続けているのは驚きですよ。この姿勢が、エリザベス女王を含め、世界中の人々に共感を呼んでいるのではないでしょうか。

ダックスが125年間、継承してきたもの

森岡
ダックスが125年を迎えます。長きに亘って愛され続けてきた理由はなんだとお考えでしょうか。
にしぐち
やはり、125年も続いてきたのは、クオリティ第一の企業理念。そして優れたサービスが大きいと思います。また、代々受け継がれる製品が、愛されてきた理由のキーワードとしてあるでしょう。私はダックスの姿勢の表れがハウスチェックだと強く感じるのです。ハウスチェックに使われている3色は、キャメル、神の繊維とも呼ばれるビキューナ、黒。色使いに最高級の2つの繊維のカラーを選んでいる点が、最高品質の製品づくりを目指す意思の表れであると読み取れます。
森岡
なるほど。僕にとってもチェックは英国のイメージで、非常に人々に愛されている柄という印象があります。ダックスのハウスチェックと言えば、品質の象徴と言えるのでしょうね。
にしぐち
モダンでありながら伝統的でもあって、飽きることがないダックスのハウスチェックの色使い。毎シーズン、このハウスチェックをどのようにアレンジした製品が登場するのかを非常に楽しみにしています。
森岡
実は、僕もその一人です。
にしぐち
そうですよね(笑)。
森岡
シーズンごとに関わらせてもらっていて、毎シーズン拝見すると、今シーズンはこう来たか! と変化があってすごく楽しい。変化が大胆でなく、さりげないこともある。そんな工夫が重要かつ、いつもブランドが新鮮でいられる秘訣でしょうね。
にしぐち
私にはそれがとても英国らしく感じられます。英国の伝統は守りつつ、挑戦を恐れず進化を続ける。英国文化が人気を得ている理由がここにあると同時に、ダックスが125年続いている理由でもあると思います。

エリザベス女王と馬術イベント

森岡
長い歴史の中で、ダックスと王室のつながりを示すトピックスを、なにかご存知ですか?
にしぐち
ダックスは英国王室が主催しているロイヤルウィンザーホースショーに長年スポンサーとして貢献しています。ロイヤル・ウォラントを保有しているブランドは、あまり積極的に保有していることをアピールしてはいけないし、着用なさっているものなど、顧客のプライバシーに関わるものを公言してはいけないルールがあるのです。そのため、本当に愛用されている洋服は、あまり表立って情報が出ていません。ところが、今年のロイヤルウィンザーホースショーで、エリザベス女王がお召しになったのが、ダックスのハウスチェックのスカートでした。
森岡
ハウスチェックですか! それなら見ればすぐに分かりますね。
にしぐち
そうです。英国の新聞『デイリーエクスプレス』の表紙にも写真が出ています。ロイヤルウィンザーホースショーは馬術のイベントで、女王は、ご子息よりも、馬の方がお好きなのでは? なんてジョークになるほど、馬がお好きなのです。ブリーダーでもいらっしゃるので、馬術のイベントには、ほぼ出席なさいます。女王にとっては趣味と実益を兼ねた非常にリラックスなさる楽しい場のようです。そのイベントでダックスのスカートをはいていらっしゃるのは、本当にご愛用の証拠と言えるでしょう。
森岡
一目で分かりますね。
にしぐち
私が独自に得た情報では、数あるハウスチェックのなかでも、エリザベス女王が愛されているのはダックスのもののようですね。きっとワードローブの中には、ハウスチェックをたくさんお持ちなのでは?
森岡
ワードローブを拝見したいですね。
にしぐち
私も拝見したいです(笑)。カラフルな公務用のお洋服は、あくまでお仕事用。こちらは、女王のプライベートの装いのようで、リラックスしたお気持ちでお召しになったのだと思います。それがダックスだったので、この写真を見つけたときは感動しました。

にしぐちさんの追求するクオリティ

森岡
今回の対談ではダックスの理念に通じる「マイ クオリティ」がテーマになっています。ご自身がクオリティについて信念とされていることはなんですか?
にしぐち
仕事でも私自身においても共通するのは、自分らしさですね。個人の生活スタイルは十人十色。周囲に左右されるのではなく、自分にとって、なにが心地よくて、なにがハッピーになれるかが、一番に気になります。私がファッションで重視する「マイ クオリティ」は、素材とパターンです。両者がよいクオリティでないと、年々納得できないようになってきました。デザインについては、若いうちに本当にいろいろなものに挑戦して、いまはよりシンプルになっています。シンプルなだけに、素材とパターンが重要というわけです。あとは顔がくすんで見えないように色使いもキーワードでしょうか。そんな意識がだんだん強くなってきました。
森岡
僕もさんざんアバンギャルドなものを着てきた過去がありました。いまは年齢を重ねて自分自身を客観的に判断してもらう上では、品質のいいものをシンプルに着るのが基本でいいのかなと。その点ではおっしゃることにすごく共感できます。いいものは、その人の佇まいを変えてくれますからね。
にしぐち
年を重ねて失敗を自分の内面に生かせて、味わいに変えられるようになると、表面的に無理に頑張らなくてもいいようになってきたのかな。それと同時に、万人のためではなく、分かる人にだけ分かる素材の風合いや着心地の良さって大事です。
森岡
分かる人にだけ分かる。これは非常に重要なキーワードで、みんなに分かってもらおうとすると、おかしなことになってしまいます。
にしぐち
なりますよね。
森岡
同じ感性を持っている人に、気づいてもらう。派手でもなくても、趣味のよい部分での人柄の伝え方があります。

忘れられないダックスの思い出

森岡
最後に、にしぐちさんとダックスとのエピソードをお聞かせください。
にしぐち
いくつかあるなかで、まじめな思い出からお話ししましょうか。2013年、エリザベス女王の戴冠60周年記念のイベント「コロネーションフェスティバル」がバッキンガム宮殿で行われました。これはロイヤル・ウォラントを保有する企業が集まって、女王の戴冠60周年をお祝いするものです。会場に入りましたら、錚々たるブランドのブースが並ぶ中、入ってすぐの場所にダックスのブースがありました。大半のブースは小さいのに、ダックスは、まるで家と言いますか、ショールームに近い規模。しかも、一番目立つ場所にあったので、ブランドの地位や品格が伝わって、驚きとともにとても感動的でした。
森岡
それは強烈に印象に残りますね。
にしぐち
あれはいまだに忘れられません。もうひとつ、笑えて楽しい思い出も。大阪の阪急うめだ本店の英国フェアでトークショーのほか、英国王室にまつわる雑貨のポップアップショップをディレクションさせていただきました。ポップアップショップでは、ダックスのコートをお借りして、マネキンに着せて店頭にデコレート。そのとき販売していたエリザベス女王のお面をマネキンの顔に被せて、ダックスのロゴ入り風船をショップに飾りました。これが通りがかりのお客様も二度見するほどのインパクトがありまして。お客様の反応はさまざまでしたけれど、おもしろいから挑戦してみようとアイディアに賛成してくれたダックスの懐の深さに感謝しています。英国王室ならびに英国ならではのユーモアのセンスをダックスが持ち合わせていて、結果的にはとても楽しいイベントになりました。これも忘れられない思い出です。
森岡
それはうれしいことですね。普通ならノーと言われそうなアイディアですよね。
にしぐち
そうです。私もドキドキしながら提案したところ、OKをいただいて。ダックスのショップの前には私の提案で、等身大のエリザベス女王のマネキンを飾りましたね。このフェアでは、店内にダックスカフェが設けられて、カフェ内のポール・ウェラーのギターの展示に感動。カフェは大盛況でした。そんな、いろいろなチャレンジ精神が、ブランドを長く支えているのでしょうね。
森岡
ダックスならではのエピソード! いつまでも考えが柔軟で、つねに新しいことや楽しませるアイディアを、目配せ、気配りしながら探している。それが125年続いているってことなのでしょうね。
にしぐち
まさにそうですね。
森岡
今日は楽しい時間をありがとうございました。

ダックスが125年間に亘り、培ったブランドの遺産や、英国王室が寄せる信頼の理由。王室のみならず、英国文化に精通するにしぐちさんには、独自の視点を通して、ダックスの全貌が確かに見えていたようです。125年を迎えたダックスは、これからも、英国文化を象徴する存在として、時代を刻み続けます。

PROFILE
森岡 弘
株式会社グローブ代表取締役、ファッションディレクター&スタイリスト。株式会社婦人画報社(現ハースト婦人画報社)にて男性ファッション誌メンズクラブ編集部でファッションエディターとして従事。退社後はクリエイティブオフィス 株式会社グローブを設立しファッションを中心に活動の幅を広げる。現在はブランドのコンサルティングや雑誌・広告の企画立案、プロデュース、スタイリングの他、男性・女性の俳優、ミュージシャンなどの芸能人からスポーツマン、文化人、政治家、企業家など、個人のスタイリングまでも行なう。またイベントのコスチュームや企業のユニフォームデザイン、トークショー、書籍の出版、セミナー講師とその活動は多岐にわたる。

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