DAKS LOVER TALKS

DAKSの創業125周年を迎えるにあたり、ファッションディレクター、森岡 弘さんが、DAKSにまつわる素敵な方々と対談。それぞれの視点から、125年に亘るブランドの知られざる魅力に迫ります。

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PROFILE
戸賀 敬城
1967年東京生まれの編集者。ナノ・ユニバース メンズ ディレクター、ヒルトン ブランドアンバサダー、ブルーダー スーパーバイザー、B.R.ONLINEスーパーバイザー、PXGアンバサダー、マクラーレン東京アンバサダー、太平洋クラブアンバサダーも兼任。過去には、『MEN'S EX』『MEN'S CLUB』『ESQUIRE THE BIG BLACK BOOK』など数々の雑誌編集長を歴任し、eコマースやイベントビジネスなども牽引してきた。2018年には『オフィス戸賀』を設立し、その活動内容は多岐にわたる。

編集者として、長い間メンズファッションに寄り添ってきたのが戸賀敬城さんです。ファッションにまつわる豊富な経験と知識を持つ戸賀さんにとってDAKSはどんなブランドに映るのでしょうか。今回はDAKSとの出会いからブランドの魅力まで、幅広くお聞きします。

DAKSとの出会いは20数年前の新人時代

森岡
戸賀さんとDAKSの出会いからお聞かせください。
戸賀
雑誌『メンズ・イーエックス』の前身の『メンズエクストラ』編集者時代ですね。24~25年くらい前でしたかね。僕がまだ20歳代後半のころです。
森岡さんも編集者でいらしたから、ご存知の通り、ラグジュアリーなブランドは新人に担当させてもらえません。そのころに先輩が担当していたページの手伝いでDAKSが登場するページに関わったのが最初。当時はいつになったら、こんなブランドを自分に担当させてもらえるのかなと思うような憧れの存在でしたよ。ましてや自分が着るなんて、まだその先にある状態で。
森岡
どんな企画でしたか?
戸賀
著名な俳優さんたちにDAKSを着用してもらう企画でした。それだけにとても着るなんて。「お前には、まだまだ早いよ」と言われているような気分でした。
森岡
となると、そんな方々に見合うブランドが必要ですよね。格上のブランドでなくてはいけなかったわけですね。

ベルトレスパンツが
印象を変えるきっかけに

戸賀
個人的に印象が強いのは、やはりベルトレスのパンツです。DAKSが世界初ですよね。いまでこそパンツって種類が豊富でイージーなものなど選択肢が増えています。でも、いま考えると、その先駆けでしたよね。
森岡
サスペンダーとベルトから男性を解放したわけですから。
戸賀
まさにそうです。それから動きやすいゴルフウェアに活用されたのか、歴史的な順序はともかく、こんなアイテムを生み出したのはさすが。僕は伝統的な英国調の柄を取り入れた、すごく上流の世界の方のブランドだと思っていたけれど、ベルトレスのパンツを知ったあたりから、徐々に身近に感じられるようになっていきました。
森岡
そうしたパンツはいまのメインストリームでもあります。
戸賀
本当にそうですね。
森岡
時代を変えたアイテムを持っているって凄いことであり、信頼されるブランドの要素の一つと言えます。
戸賀
今日も穿いてみたら、シャツが出てこないように腰裏にゴムが貼ってあるなど細かいところに配慮されていることに改めて気づきました。また、ウエストがストレッチするなど、なかなかできないことにまで踏み込んでいます。かつて、僕は上流のイメージを強く抱いていましたが高級感の一方で機能が満載されていると知ってよかったと思います。

ハイクオリティと時代の気分の
バランスに感心

森岡
DAKSは物作りの点でクオリティファーストをキーワードに掲げているんですよ。
戸賀
編集者として仕事をするなかで、その話はよく聞きました。デザインだけではなくクオリティも大切にする。これはDAKSの魅力で先輩もたびたび、僕に話していました。
森岡
クオリティファーストのなかの適正価格と高品質。
戸賀
いつしか、そうした理念を忘れてしまって、廃れてしまうブランドもありますもんね。
森岡
そうですね。DAKSは125年を迎えます。時間を重ねると、その分の辛さもあるでしょう? 変わっていきたいけれど、変わりきれないこともある。また、守らなくてはいけないものもある。その辛さを思えば、100年以上続いているって素晴らしいし大変なことです。我々の想像以上だと思います。
戸賀
そうですよ。じっくりみると、伝統的な柄は生かしながらも一方ではネオンカラーのニットを取り入れるなど新しい取り組みも行っています。
森岡
2019年春夏コレクションですよね。伝統的なウインドウペン(チェック柄のひとつ)の生地をネップにしてみるなど、ひと手間あることで印象がまったく違って見えるものも。スタイリストの立場でいうと、男性の服って確信犯であるべき。みんなにわかってもらうのではなく、わかる人にだけわかる企みのようなテクニックがあると、洒落た人に共感してもらいやすい。シャツの胸元を大きくはだけさせて「ほら、セクシーでしょ?」ではなく、襟を全部閉じているのに、さりげなく時代の色気が漂うような。それって重要なことではないでしょうか。英国ブランドにはトラディショナルな気分はそのままに、時代の中で必要とされるテイストはアップデートされていてほしい。
戸賀
英国調がトレンドのいま、DAKSも含め、英国ブランドが全体的に追い風を受けています。すごくいい時代です。

挑戦する姿勢に共感

森岡
僕はDAKSのカタログのビジュアルを担当しています。デザインを見てDAKSの提案はトラッド、英国調のなかに、モダンさが織り交ぜられているなと。言葉として存在するかどうかはともかく、その先にインターナショナルトラッドという気分さえ、感じさせる懐の深さを感じます。
戸賀
森岡さんは新しいことに挑戦するのがお好きですよね。かつて森岡さんが在籍していた『メンズクラブ』に、のちに僕が仕事をすることになりましたでしょう。在籍期間は重なっていないけれど、森岡さんの打ったジャブが、後になって生きていると聞いています。以前、先輩にすごく大事なことを言われたことがありました。「(『メンズクラブ』の編集の主軸であった)アメリカントラッドを、いかに崩していくか?」と。森岡さんの姿勢は、そういう取り組みにも似ていますよね。
森岡
変わらない良さは、もちろん理解しています。でも、その範囲から逸脱しない中で、どれだけ楽しむかを考えたときに、予定調和で終わるよりは「こうでなくてはいけない」という決まりから、許された範囲から少し踏み出すのが楽しい。僕が『メンズクラブ』にいたときのトラディショナルは、上から下までルールがあって。そのルールから外れることは間違っていると言われました。今の時代は外し方、間違い方によっては、「それ、いいんじゃない?」と言ってもらえるところまできています。日本の服装文化が成熟して、ついに個人主義というのか、パーソナリティを優先してもらえる時代が到来したのかなと。戸賀さんは、それを体現していますよね。戸賀スタイルがありますから。ブリティッシュな香りにイタリアンな気分を足してみるとか、ね。そんなフレーバーを少し乗せることで、またブリティッシュが違うものにも見えてくる。英国にはアバンギャルドと変わらないトラディショナルをミックスできる土壌があります。その点、DAKSは世の中の変化を面白い要素として、取り入れていることのできる余裕があるのが見事。広告を見ていても時代の一歩先を進んでいて、イラストを積極的に取り入れていました。

仕事のキーになったのはイラスト

森岡
僕ね、編集部時代に洋書をたくさん見ていて、それがページ作りや撮影ビジュアルのヒントになりました。DAKSの過去のビジュアルは、そうしたなかで見た記憶があって、おおいに参考にしたものです。ほかにもイラストを見ていて、当時の男性が「こうしたものを着ていたのか」と。イメージも沸くし、時代背景もよくわかります。戸賀さんも、昔のイラストはご覧になっていましたか?
戸賀
たくさん見ましたね。僕の場合は見て、参考にするのを越えていて。プレスの方にご協力いただいて、当時のイラストをそのまま誌面に掲載。それを読者のコーディネートの参考にしてもらうページを作ったのを覚えています。
森岡
へー!
戸賀
イラストレーターはマックス・ホフさんでしたよね。イラストのインパクトは大きい。当時、英国物をいかに誌面に取り入れるかを考えたときに、僕はイタリア物にも興味を引かれていたところもあって、イギリス生まれのものをイタリアのフィルターを通したスタイルが好みでした。イタリアの紳士服の源流でもあるイギリスのファッションをひも解くうえで、参考になるイラストがDAKSには多かったですよね。
森岡
ファッションイラストですもんね。だから、洋服の押さえるべきポイントはしっかり押さえられていて参考になりましたよ。DAKSのスラックスを穿いて、ゴルフやテニスをしていたのかとイラストで知って。あまりにも洒落た装いでスポーツをしていたことに驚いた記憶があります。

昔のDAKSの提案は、いまなお新鮮

森岡
イラストの盛んだった時代を自分の目で見ていないだけに、イラストが資料として参考になったなと。いま、こんなスタイルでゴルフをしたら注目されるのでは?
戸賀
かわいいですよね。昔よりもアップデートされているでしょうが、このスラックスも本当に穿き心地がいい。スポーツスラックスと言っていいくらいに快適。現代のプロダクトで、こういう(昔の)スタイルを再現したら面白いのではないですか?
森岡
同じクラシックスタイルでもニッカポッカを穿いてゴルフをするより、こちらのほうがエレガントでかっこいい。
戸賀
当時の提案は、いま見ても新鮮。そして、自分のゴルフスタイルに取り入れてもいいな。
森岡
いまの時代よりも、一歩先のエレガンスが昔のイラストやデザインにあるというのでしょうか。男性がもう少し頑張って着飾ってもいいぞ。そんな当時の香りが感じられます。
戸賀
森岡さんの香り立つセクシーさも隠してくれるじゃないですか(笑)。
森岡
あははは。確かに、ストイックなのに、色気があるスタイルです。イタリアのように胸のはだけた、これ見よがしなものではなく、隠しながら少々色気が漂う。それが、この時代の着こなしにはあって、非常に参考になります。もし、いまこんな雰囲気のスタイルを提案するビジュアルが作れたら、すごくかっこいい。クラシック気分の装いも注目されてきていますから。
戸賀
じゃあ、次のゴルフは2人とも、DAKSでコーディネートしましょうか。
森岡
DAKSの装いでゴルフをするっていいね。
戸賀
かっこいいと思いますよ。
森岡
かっこいいのは間違いない。あとは動きやすさの部分。そういうニーズに応えた製品を作ってもらえるといいですね。
戸賀
そうですね。
森岡
DAKSにはゴルフラインもあるんですよ。でも、いま穿いているようなパンツはラインナップにはなかったかな。こういうのだと、普段にも穿けて便利。
戸賀
穿いてみたいです。

パワーを感じさせる洋服とは?

森岡
戸賀さんが洋服を選ぶ際、気にするのはどんな点ですか?
戸賀
いろいろあるなかでも、一番は品質です。最近は洋服作りも始めましたので、クオリティは気になります。男性特有のラインが見てとれる肩と胸がきれいに表現できて、なおかつ色気と言いましょうか。それらが相まってオーラのようなものが表現されるためにも肩、胸のつくりは重視したいですね。50歳を過ぎたので猫背にならないように意識しています。でもシャンとするように努力していても、仕事が忙しすぎて疲れることもあります。そんなときにも「上質なものを着ている」、「あの人はパワーがある」と印象付けられる洋服が好きです。
森岡
自分が納得できる一着を着ていると自信が持てるし、姿勢まで変わります。洋服からパワーをもらうことは確かにありますよ。
戸賀
DAKSの洋服はもう少し重厚な着心地かと思っていたら、とても軽やかで今の時流に乗った着やすさですね。
森岡
ものすごく似合っているじゃないですか。サイズ感もいいし。
戸賀
ありがとうございます。私も今日の装いが気に入っています。

125年、多くの人々に愛されてきた
理由とは

森岡
DAKSが125年を迎えます。こんなに長く愛されてきた理由は何だと思われますか?
戸賀
品質が大きいでしょうね。そして、それぞれの時代のトレンドを取り入れながら、培ってきた125年だと思います。着心地の良さに、ほどよいトレンドが感じられる。一方で手持ちのアイテムとの相性がとてもよくて、ミックスコーディネートしやすいブランドでもあるわけです。こういった点が多くの方に愛されてきた理由ではないでしょうか。
森岡
『メンズクラブ』の歴史が65年で、DAKSはその約2倍の歴史がある。戸賀さんは『メンズクラブ』の編集長をなさっていましたから、ブランドを維持する大変さは、よくご存じなのでは?
戸賀
確かに似ていますよね。
森岡
守りと攻めのさじ加減がね。同じものを作り続けていると飽きられます。料理店でも定番を、時代に合わせて少しずつ変えるところがあると聞きました。変わらないのはいいことかと思いきや、長く愛されるためには微調整が必要なのでしょう。そんな125年だったのかもしれません。変えていく勇気は必要ですね。
戸賀
大切な部分を残しながらも時代を反映して少しずつ変える。長い歴史の中でデザイナーとプロダクトを作る人たちにはいろいろな考え方があったのではないでしょうか。そんな裏話も機会があれば聞いてみたいです。僕たちの仕事にも生かせそうですよ。

DAKSへのメッセージ

森岡
最後に戸賀さんからDAKSへメッセージをお願いします。
戸賀
DAKSは僕がまだ駆け出しの時に出会ったブランドなので、簡単に手を出してはいけない孤高のブランドのイメージがあったんです。でも、実際にはいまの僕や、それより若い人にも着ることができるブランドだと最近になってわかってきました。一方で着心地が良くて、僕が望んでいる男の色気をしっかりと持っているブランドなので、僕の周りの大人の男性にも着てほしい。その前にまず自分がDAKSを着て自分のものにしたい。これが僕の52歳としてのトライです。DAKSには、これからも高品質を保ちながら巧みにトレンドを取り入れ、輝き続けてほしいですね。僕も積極的に着て、自分の足りない部分は洋服のオーラを借りて補えれば。年を重ねるごとにいろいろなDAKSの魅力に気付いていければいいなと思います。
森岡
今日はありがとうございました。
PROFILE
森岡 弘
株式会社グローブ代表取締役、ファッションディレクター&スタイリスト。株式会社婦人画報社(現ハースト婦人画報社)にて男性ファッション誌メンズクラブ編集部でファッションエディターとして従事。退社後はクリエイティブオフィス 株式会社グローブを設立しファッションを中心に活動の幅を広げる。現在はブランドのコンサルティングや雑誌・広告の企画立案、プロデュース、スタイリングの他、男性・女性の俳優、ミュージシャンなどの芸能人からスポーツマン、文化人、政治家、企業家など、個人のスタイリングまでも行なう。またイベントのコスチュームや企業のユニフォームデザイン、トークショー、書籍の出版、セミナー講師とその活動は多岐にわたる。

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