DAKS LOVER TALKS

DAKSの創業125周年を迎えるにあたり、ファッションディレクター、森岡 弘さんが、DAKSにまつわる素敵な方々と対談。それぞれの視点から、125年に亘るブランドの知られざる魅力に迫ります。

INTERVIEW MOVIE
PROFILE
ソリマチアキラ
1966年東京生まれ。20歳代にアパレル店員の傍ら、趣味でイラストを描く。のちに勤めていたギャラリーでの個展を機に、才能が世に知られ、頭角を現す。91年より、フリーランスのイラストレーターとして活動を始める。これまでにも著名ファッション誌、ANAカード、ファッション企業の広告などで活躍。自身も洒落者として知られる。

ファッションイラストの名手でありながら、洗練された装いの達人として知られるのがソリマチアキラさんです。2018年秋冬のイラストレーションを担当したソリマチさんに、DAKSの魅力と、お仕事の様子をお聞きします。

流行にとらわれないイラストが信条

森岡
こんにちは。ご無沙汰しております。
ソリマチ
こんにちは。
森岡
今回、DAKSのお話をお聞きするにあたり、テーマは「マイクオリティ」。ソリマチさんは、いつもクオリティの高いイラストを描いていらっしゃいますよね。クオリティについて、心掛けていらっしゃることは?
ソリマチ
イラストもそうですが、ファッションについてもオーセンティックなものがずっと好きです。流行にとらわれない、タイムレスで上質なものを選んでいきたいとの思いがあります。イラストについても、そんな存在になれたらなと、つねに目指しています。
森岡
いやいや、もう充分そうですよ(笑)。本当に魅力的だなと思うのは、イラストって色使いをはじめ、自由な世界じゃないですか。拝見すると、すごく洋服のポイントを押さえていらして、こちらが勉強させられることもありますよ。こういう色使いはいいなとか、合わせ方が素敵だな、とかね。服を分かっていながら遊ばれている。イラストって名前が出ないことが多いけれど、ソリマチさんの作品はすぐにわかります。僕にとってはそれがひとつのクオリティかなと思います。
ソリマチ
うれしいです(笑)。ありがとうございます!

紳士の装いを熟知するからこそ、いい絵が描ける

森岡
ファッションが分かっていないと、ファッションイラストは描けないですもんね。
ソリマチ
そうですね。イラストの中でも、ファッションイラストは自分で着ていないと分からないといいますか。服を体験していないと描けない部分ってすごく大きくあると思います。
森岡
自分が着たい服をイラストに起こすこともあるのですか?
ソリマチ
はい。自分が憧れている服とか、手にはできないけれども、いつか着てみたいものを絵に起こしてみたい気持ちがあります。
森岡
今日のコーディネイトもベースはブリティッシュですが、佇まいは、かなりモダンな感じがします。
ソリマチ
完全なガチガチのブリティッシュスタイルは自分には似合わないかなと(笑)。
森岡
そんなことないでしょうけれど。でも、(ブリティッシュスタイルの)基本はご存じですもんね。
ソリマチ
生活感も違いますし、自分なりにアレンジもしてみたいです。

構図を決めるまでが最大の難関

森岡
ファッションをイラストに描き起こすご苦労についてお聞きします。私たちは一枚の絵として完成形を見ていますが、そこにたどり着く大変さは、どれほどのものでしょう?
ソリマチ
白紙から描いていきますので、生みの苦しみではないけれど、構図を決めていくのが一番悩むところです。
森岡
僕の仕事は、あるものを組み合わせて、今の気分でどう表現していくか。それがスタイリストであり、ファッションディレクターとしての重要なポイントです。一方、ソリマチさんはゼロからの作業ですよね。ゼロから生んでいく大変さは、ものすごく理解できます。あとは締め切りね(笑)。ソリマチさんは、締め切りは守るタイプですか?
ソリマチ
アハハ。締め切りには真面目で、あまり破ったことがないんです(笑)。
森岡
それは素晴らしい!守ってくださらない方がいっぱいいらっしゃって。僕も編集者時代によく泣かされたことがあります(笑)。

DAKSが紹介する英国の風景

森岡
今回、イラストを7点、お描きになっていますね。
ソリマチ
そうですね。メインカットで7点、描いています。
森岡
拝見したところ、巧みな色使いに繊細なタッチ。まさにソリマチワールド全開です。
ソリマチ
英国の風景とDAKSのファッションを融合させて、どう配置するのかが一番難しかったですね。
森岡
テーマは?
ソリマチ
今回はDAKSを着て旅をするのがテーマでした。クラシックな列車に乗って旅が始まって、英国各地の伝統的な街を旅する。
森岡
では、ファッションのテーマである「旅」と連動させているのですね。
ソリマチ
そうです。
森岡
このイラストはイメージを膨らませるうえで、資料も探されたのですか?
ソリマチ
風景の資料はご提供いただいたのですが、どう人物とシチュエーションを組み合わせていくかが大変でした。
森岡
洋服は自由に選べたのですか?
ソリマチ
2018年のコレクションがありますので、その中から選び、イメージを広げまして。
森岡
このイラストは、今日着ていらっしゃる洋服のイメージに近いですよね。パンツとネクタイの色合わせなんて、まったく同じ(笑)。
ソリマチ
あ、言われてみるとそうですね(笑)。
森岡
やっぱり自分の気になるコーディネイトや色合わせも反映されてしまうんですね。
ソリマチ
そうですね。流行を完全に意識しないわけではないのですが、あまり流行にとらわれると深みがなくなってしまいます。「流行には、あまり本気にならない」を、自分の決まり事にしています。
森岡
ソリマチさんを絵に例えると額縁がしっかりできているから、その中の世界は自由になさっても仕上がりはソリマチワールドに収まるんでしょう。
ソリマチ
流行を少し盛り付けることもあります。洒落、つまり洒落っ気の部分で、流行を取り入れるのが、かっこいいかなと。
森岡
確信犯ですね。分かる人には分かるけれど、気が付かない人には分からない(笑)。
ソリマチ
そうです(笑)。

洋服好きがファッションイラストの原点

森岡
僕は『メンズクラブ』編集部に過去に在籍していた時代にソリマチさんのお名前を認識しました。ファッションは、間違いなくお好きな方だとわかります。洋服に興味をもたれた経緯は?
ソリマチ
絵の職業に就く前から、洋服が一番好きで。趣味と言いますか、中学生時代から洋服屋に通っていました。自分のお小遣いで買えるようになってからは、洋服を買うのが趣味のような時期がありましたね。
森岡
それで絵を描くのもお好きだったから、必然的にファッションイラストの道へ進まれたわけですね。
ソリマチ
はい。好きなものを描きたいので、ファッショナブルな男性、女性を描きたい、との思いがありました。
森岡
ファッションイラストは自由な世界ですから、自由に(作品を)盛り付けられるじゃないですか。これも付け足してみようとか。僕の仕事ではファッションモデルに服を足し算できるんです。帽子をかぶらせてみよう、サングラスをかけるとキマるかな、など、どんどん足せる。ところが、普通の人は引き算になってしまいます。最初に理想形を描いても、帽子は似合わないから……、サングラスはちょっとダメだな……という風に、引いて終わる。でも、ファッションの世界は足し算ができるから楽しい。

イラストだからこそ、心に響く広告

ソリマチ
DAKSの昔の広告を見るとイラストで表現されています。写真でも実現できる広告を、あえてイラストに。やはり、イラストって心に響きます。
森岡
写真ってリアルだけれど、イラストは少し夢があるというのか。あ、こういう場所に行けるんだ、という仮想現実が味わえます。そのあたりが楽しいところですか?
ソリマチ
はい。洋服は実物を見るのが一番リアルだけれど、イラストに起こすと、周りの風景(のイメージ)がもう少し、見えてきたりすることもあります。
森岡
このイラストを見ていいなと思ったとして、この服は現実にあるんですよね?
ソリマチ
これはあります。今回のDAKSのイラストについては、すべて商品を絵にしています。
森岡
じゃあ、これが欲しいと思ったら、買える。ファッションフォトと一緒ですね。それを着て、どこへ行くかも想像なさっているんですか。
ソリマチ
そうです。これを着て、どこに(人物を)立たせたいなど要素を組み合わせて。
森岡
こちらはどんなイメージで描かれたのですか?パーティー?
ソリマチ
これはクリスマスツリーなんかをあしらって。チャッツワース・ハウスという英国の貴族の建物を背景にしています。

洋服は着た後、どこへ行くかが真の楽しさ

森岡
やっぱり洋服って、着ることの楽しみもありますが、それを着てどこへ行くか、どう過ごすかを重ねて考えると、さらにワクワクします。このイラスト1枚を見ても、パーティーに行きたくなるし、旅に出たくなる。
ソリマチ
服を選ぶときに、素敵だなと思って選ぶだけでなく、着て、どんな景色の場所へ行くかを考えるのが一番おもしろいです。
森岡
描くときもそうですか?
ソリマチ
描くときも、やはり風景に似合っていないと、いい絵になりません。
森岡
DAKSはイラストで非常に多くの人をときめかせたブランドです。そんなDAKSからイラストの依頼を受けて、どんなお気持ちでしたか?
ソリマチ
ワクワクしました!特に英国スタイルは自分の非常に好きなものでもあります。正式に依頼があって、自分がどのように表現できるのかと。

構図に悩んだ後、作画は約1日で完成

森岡
確かに自分の好きな世界だと夢が広がりますよね。締め切りまでのゆとりはありましたか?
ソリマチ
あまり急いで描いてもいいものにはなりませんから、ある程度の期間をいただきました。
森岡
すごく繊細なタッチですからね。1枚にどれくらいの時間が必要ですか?
ソリマチ
うーん、構図を決めるのに一番時間が掛かります。そこには色も何もなく、どういう景色に、どんな人物を配置して、どんなふうにポーズを取らせるか?を決めるのが一番の悩みどころです。それが決まってから1日くらいで描き上げます。
森岡
これを1日で?!
ソリマチ
約1日で描けますね。(構図が)決まってからは、ほぼ作業だけになりますから。
森岡
水彩は描き直しができないんですよね?
ソリマチ
塗り直しが効きませんので、1回失敗するともうお終いです。

伝統を守りながら挑戦を続けるDAKS

森岡
お聞きしたら、師匠がいらっしゃらないとか。
ソリマチ
完全に独学です。
森岡
へえ~。昔とタッチはあまり変わっていらっしゃらないように見えます。
ソリマチ
そうですね。キャラクターについては、現在の作風で固定したかなと思います。
森岡
DAKSの昔の広告イラストみたいに、何年も継続していけるといいですよね。
ソリマチ
そこで少しずつ、変わっていく自分も面白いかもしれません。
森岡
DAKSって英国のブランドで、歴史もあって。でも、その時代ごとにうまく変わっているというのか。(考えが)凝り固まっていなくて、しなやかな部分があります。核は変わらないけれど、面白がってなにかを変えていく。進化と深化の両面がブランド作りには必要なのかなと僕は考えています。頑なになりすぎると、時代と離れてしまうこともあるでしょう。英国って意外にアバンギャルドですよね。
ソリマチ
英国は時代に合わせてアップデートしています。
森岡
理念から離れすぎずに考える面白味があります。この数年、DAKSのお仕事をお手伝いしていて、「今シーズンは、こうきたか」なんて、面白味はいつも感じています。次はどうなるんだろうという楽しみのある英国ブランドがDAKSなんですよ。

古来の美学を
現代に継承して迎えた125周年

森岡
DAKSのお仕事をなさって、気付いたことや印象をお聞かせください。
ソリマチ
ロイヤルウォラントを保有していらっしゃるので、王室・貴族に愛されたマテリアルをお持ちのブランドなのだなと。
森岡
しかもロイヤルウォラントは3つ。
ソリマチ
その点では伝統的であります。100年以上続いている柄をいまだに使っていて、それをモダンに2018年、2019年に続けていけるブランドでもあります。
森岡
クオリティが高く、それを適正な価格でご提案。なおかつ、ブリティッシュ発のモダンな形。いうのは簡単ですが、製品として仕上げるのは非常に難しいことだと理解できます。それは毎シーズン、手にして拝見すると思うところです。おそらく、イラストに起こされるのと、僕の仕事とは違う点もあるでしょうが。
ソリマチ
風景に出てくるレトロな列車、伝統ある建物などの風景に、きちんとマッチするディテールを持っているのはすごい点です。
森岡
今回、125周年ですよね。やはり、継続は簡単ではなくて。つねに変わらなくては継続できない。変わらないと飽きられもします。特に洋服の世界は、それが大きいでしょう。125年を迎えるスゴさを、いままでの流れを知っている人がいらっしゃれば、ぜひ聞いてみたい。DAKSのベルトレスパンツ「DAKS TOP」(1934年登場)は、当時の男性をベルトやサスペンダーから解放してくれた。そういうものも、洋服に対する思いが時代に合わせて、どう変化するのかを考えて生まれたと思います。それが常にあるからこその125年かな。
ソリマチ
僕も自然に変化していくことがあります。すでに30年近くイラストを描いています。古い作品を見ると、こんな風に描いていたのか?と思うことも。自分では変わらないつもりで描いていても、少しずつ自分も進化しているんだなと。

ソリマチさんを感心させた
DAKSのウィメンズ

森岡
現在とこれまでのDAKSを御覧になってきたソリマチさんから、今後のDAKSへの感想や希望はありますか?
ソリマチ
今回、細かく洋服を拝見して、非常に驚いたのはウィメンズのライン。かっこいいなと思いました。かなりモダンなラインです。私は1950~60年代の英国やヨーロッパの映画がすごく好きなんです。そのなかに登場しそうなモダンさとクラシックをうまく融合した形といいますか。
森岡
こういう提案を続けてほしいですよね。女性は男性以上に自由にデザインされたものがあるので、女性ばっかりズルいな(笑)。まあ、男性は女性を引き立てる脇役でしかないので。メンズ、ウィメンズともにしっかりと奥行きがあって、なおかつコンセプトが明確。これからおもしろい提案がたくさん出てくるのかなと、個人的には思っています。
ソリマチ
私も楽しみです。
森岡
すごくお忙しくされていますが、きっと、いまも締め切りに追われていらっしゃいますよね?
ソリマチ
まあ、常にいろんな締め切りが(笑)。
森岡
とても手が掛かると思うんです、イラストを仕上げるのって。そんなお忙しいときに、今日はありがとうございました。いろいろなお話ができて、楽しかったです。
ソリマチ
いえいえ、ありがとうございました。楽しかったです。
PROFILE
森岡 弘
株式会社グローブ代表取締役、ファッションディレクター&スタイリスト。株式会社婦人画報社(現ハースト婦人画報社)にて男性ファッション誌メンズクラブ編集部でファッションエディターとして従事。退社後はクリエイティブオフィス 株式会社グローブを設立しファッションを中心に活動の幅を広げる。現在はブランドのコンサルティングや雑誌・広告の企画立案、プロデュース、スタイリングの他、男性・女性の俳優、ミュージシャンなどの芸能人からスポーツマン、文化人、政治家、企業家など、個人のスタイリングまでも行なう。またイベントのコスチュームや企業のユニフォームデザイン、トークショー、書籍の出版、セミナー講師とその活動は多岐にわたる。

BACK NUMBER

第1回 世界規模で展開されたDAKSのイラストレーション誕生秘話
第2回 英国王室研究家が語るハウスチェックからわかる、ダックスの真意
第3回 伝統の中に織り交ぜられるトレンドがDAKSの魅力